有限会社パスト・プレゼント・フューチャー代表取締役
クリス・グレン インタビュー

パスト・プレゼント・フューチャー設立の経緯と仕事に対する「想い」や「こだわり」「大切にしていること」などについて語りました。

クリスさんのキャリアは、どのようにスタートしたのですか?

85年に1年札幌に留学し、帰国後はオーストラリアでブロードキャスティングとジャーナリズムを勉強しました。18歳でラジオDJデビューし、ラジオ局ではCMコピーライターの仕事もしていました。7年半で3,000本は、CMコピーを書きましたね。仕事は順風満帆でしたが、どうしても「日本へ帰りたい!」と思ってしまって(笑)オーストラリアに家も買ったのに、その思いだけで日本へ来てしまいました。それが今から30年前です。

パスト・プレゼント・フューチャーを立ち上げたきっかけは?

来日した翌年、名古屋のFMラジオ局でラジオDJデビューをしたんですが、仕事が軌道にのってきたタイミングで会社を設立しました。「テレビやラジオの番組もつくってみたい」という思いもあったので、自分も含めたタレントマネージメントと番組企画制作ができる会社として法人化したのが、パスト・プレゼント・フューチャーです。

なぜ、この会社名に?

パスト・プレゼント・フューチャー(以下、PPF)は、過去・現在・未来という意味なんですけど、僕の本業であるラジオDJの仕事は、過去の名曲から現在のヒット曲までを番組でオンエアします。その名曲やヒット曲は、未来まで受け継がれていくものばかりです。PPFも、そんな風に愛される存在でありたい、必要とされる会社であり続けたい、そんな思いでつけました。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と、とよく言いますが、今ある現在も、この先の未来も、人類が過去にしてきた経験が基盤になってつくられています。過去から学び、現在(いま)を知り、未来へとつなぐ。このような意味も社名に込めました。

メディア、ツーリズム、エデュケーション(教育)と、3つの柱に事業を展開していますよね?

もともとはメディア事業だけの会社でしたが、友人、知人、取引先の皆さんから「こういうこと、できませんか?」と、相談を受けたり、求められたりすることをカタチにしていくうちに、この3つの事業が確立されていったという感じです。ツーリズムの事業も元々は某市役所の方から「僕たちより地域の魅力を知っているし、それを伝えるテクニックとハートもある。是非アドバイスをしてもらえませんか?」というところから始まりました(笑)はたから見ると、この3つの事業には共通点がないように見えるかもしれませんが、PPFの事業のすべては「伝える」ということが軸になっています。つまりは「コミュニケーション」です。

PPFの大切なメンバーであるラジオDJ、ナレーター、司会者など「言葉で伝える」ことを生業にしているプロフェッショナルな人材は、みなさんが「伝えたい」と思っているモノやコトの魅力を「言葉で伝える」ことができるスキルを持った人たちです。お客様からの要望にしっかりと応え、皆様の代わりに「伝える」お手伝いをさせていただきます。しかもPPFの場合は、翻訳、外国語ナレーション、どちらも対応可能ですから、日本国内のみならず、海外向けのプロモーション、コンテンツ制作も可能です。日本の場合、どうしても海外への情報発信というと「言葉の壁」が立ちはだかり、何をするにも手探りという印象を受けますが、その壁を越えさえすれば世界の人々とのコミュニケーションができるようになり、チャンスも可能性も広がります。今や世界への発信は、けっして大企業だけのものではありません。日本各地に存在する魅力的な観光地、小さな町の酒蔵さん、伝統を守り続ける職人さんも、どんどん世界へ出ていける時代です。日本には素晴らしいモノ、コトがたくさんありますから、それを世界に伝える、届けるお手伝いをするのもPPFの大切なミッションだと考えています。

ツーリズムの事業も、それに通ずるところがありますか?

そうですね。ツーリズムの事業は、特に訪日外国人(インバウンド)に焦点を当てていますが、まさに地域の魅力を世界に発信する「伝える」ことが重要になってきます。このときに特に重要だと考えるのは、一方的に伝えたいことを伝えるのではなく、情報を受け取ってもらう相手にきちんと伝わるように届けることです。外国人の僕から見ると、残念ながら、それができている地域は本当に少なくて「もっと、こうしたほうがいいのに…」と思うことが多々あります。

それは、たとえばどんなことですか?

日本人が日本人向けに書いた文章をただ翻訳して載せているだけのWEBサイトや動画コンテンツの字幕は、その典型です。日本人と外国人では、日本に対する知識量が違うので、そのあたりを考慮して翻訳をすることが必要ですが、一般的な翻訳ではそこまで中身を精査して翻訳をすることはしないんですよね。翻訳は、あくまで原文の意味がわかるように訳すだけ。なので、日本の知識を持っている英語ネイティブの僕が見ても「意味がよくわからない」ということは多々あります。つまり「コミュニケーションになっていない」というわけです。さらにもう一つ問題なのは、相手には伝わらない文章になっていることを発注者側が気づかないまま、サイトに掲載してしまう事例です。一応英文の体裁にはなっているので、よほどの語学力がなければ気づけない、もしかしたらネイティブであっても「伝える」ということの根本を理解していないと見過ごしてしまうかもしれません。これは、本当にもったいないと思いますね。せっかく世界に発信したのに、それがイメージを傷つけたり、信頼を失うという結果を招いたりしたら本末転倒です。世界に伝えるためには、やはりグローバルな視点と世界に出しても恥ずかしくないクオリティにまで持っていけるだけの経験とスキルが必要だと思います。

最後に、PPFの強み、そして大切にしていることは何ですか?

長年メディアの仕事をしてきましたから、経験もノウハウもありますし、さまざまな分野のプロフェッショナルとのつながりもあります。PPFは小さな会社ですが、さまざまなプロフッョナルと手を組み、プロジェクトごとに最適なチームを編成して、クライアントの課題解決や要望にこたえることができる。それが最大の強みだと思っています。たとえば映像一つ制作するにしても、目的も予算も違いますし、堅くて真面目なリクルート動画を作りたい、バラエティ番組のようなユニークなテイストにしたい、ナショナルジオグラフィックのような美しい映像と外国語のナレーションが欲しいなど、お客様からの要望もさまざまです。その要望に応えられる最適なチームを編成する。これはお互いの信頼関係があるからできることで、これこそPPFの強みです。

そして我々が大切にしていることは、とにかくプロフェッショナルであること。これに尽きます。プロの仕事をすれば、必ずお客様に喜んでいただけますし、必ず次につながりますから。

代表取締役社長 クリス・グレン(CHRIS GLENN)

1968年、オーストラリア・アデレード市生まれ。93年より名古屋市在住。
8歳の頃の夢は、ラジオDJになること。その夢を弱冠18歳にしてつかみ、オーストラリアのラジオ業界に鮮烈デビュー。合わせてCMコピーライターとしても頭角を現し、優秀なコピーライターに贈られる「ラ・アワード」 「ゴールデン・スタイラス・アワード」の2賞で、優秀賞を受賞。オーストラリアで活躍した7年半の間に書いたCMは、3,000本を超えた。

日本での生活を夢見て、92年に来日。93年からは名古屋へ住まいを移し、ZIP-FMをはじめ、東海エリアを中心にラジオDJ 、タレント、ナレーター、バイリンガル司会者として第一線で活躍し、99年、有限会社パスト・プレゼント・フューチャーを設立。タレントマネージメントのほか、グローバル事業として翻訳やナレーションをはじめとする多言語サービスや行政および観光地へのインバウンド観光に関するアドバイス、観光プロモーションコンテンツ制作や旅行商品の造成なども行なっている。
趣味は、戦国史の研究、甲冑武具の収集、城めぐり、古武道など。日本人よりも日本人らしい外国人として、注目されている。

0:00
0:00